トピック
「海洋科学との接続性を考慮した海洋ガバナンスの構築」研究会(東京大学公共政策大学院 松浦正浩)
2012年10月10日、東京大学伊藤国際学術研究センターにおいて「アジアにおける統合的海洋管理の制度設計と政策手段」研究グループ(代表:奥脇直也明治大学教授)と合同で、研究会を開催しました。
はじめに、領域代表の古谷教授より、「新海洋像」研究の背景と概要について説明が行われました。その中で、自然科学と社会科学の研究者が、本研究を通じて交流し、共通言語を創ることに大きな意味があることが指摘されました。
次に、奥脇教授より、「アジアにおける統合的海洋管理の制度設計と政策手段」研究について概要の説明の後、両研究グループのメンバーにより、連携可能性について議論が行われました。議論のポイントは以下のとおりです:
- MSY(maximum sustainable yield)や鉄散布に関するルールについて科学委員会が示す判断が、どのようにして科学的知見に基づいているのかに関心あり。
- 新しい科学的知見が解釈に影響を与えるだろうが、数年間の研究期間においてどこまでそれを明らかに示せるかが課題。
- 研究期間内に、自然科学系グループの研究成果が法・政策の検討に利用されるまでに至ることは難しいであろうから、本グループのテーマ設定は独自でもよい。鉄散布に関する議論など、過去の経緯を研究してはどうか。
- 東シナ海の特性が見えてくると政策提言につながりやすい。
- 「科学者」と「研究者」の異同を考える必要がある。新海洋像のメンバーは、「研究者」として関わる。
- 科学的情報は、科学者から行政官へといきなり引き継がれてしまう。
- 海洋科学に関する国際機関としては、学術連合としてのICSU(International Council for Science)や政府間組織としてのIOC(Intergovernmental Oceanographic Commission)があり、これらのSSC(Steering Scientific Committee)に専門家が関与。新海洋像のメンバーもICSUの下部機関であるIMBER(Integrated Marine Biogeochemistry and Ecosystem Research)やSOLAS(Surface Ocean Lower Atmosphere Study)のSSCに関与。他にもFAOや大陸棚限界委員会において、またバラスト水管理について国際的な議論に科学者が関与している。
次に、農学生命科学研究科 黒倉壽先生から、日本の漁業史、東アジア各国における漁業の実態に関するご研究について話題提供が行われました。また、野村一郎先生から、ASEAN拡大海洋フォーラムでのお話をもとに、東アジア地域のRFMOや水産資源管理の枠組みについて包括的なお話をいただきました。